私はとても運が悪いのですが、運ってどうにかなるものなのかということを考えて、目に留まった本の感想を書きたいと思います。
遺伝の力と環境の影響
『運は遺伝する』は、橘玲氏と行動遺伝学者の安藤氏による対談形式で進む一冊で、遺伝と環境の関係に焦点を当てた議論が展開されています。
本書では、経済的成功や学業成績などが遺伝によって説明されるという視点が提示され、これまで信じられてきた「努力すれば成功する」という考えに挑戦する内容となっています。
遺伝がいかに人生に深く関わっているかを知ることは、驚きと同時に安堵感をもたらしました。
遺伝が適切な環境を引き寄せる?
本書の中で特に印象に残ったのは、遺伝が「適切な環境を引き寄せる」という考えです。
知能や性格、さらには選ぶ環境までが遺伝によって大きく影響されているという内容は、これまでの価値観を揺るがすものでした。努力や環境の影響が強調される社会において、遺伝の影響力が大きいという点は、非常に挑戦的なテーマです。
遺伝的特性を活かす「咲ける場所」を見つける
しかし、遺伝の影響をただ悲観的に捉えるのではなく、自分の特性を理解し、それを最大限に活かせる環境を選ぶことが重要だと説かれています。
著者が述べる「咲ける場所に動きなさい」という言葉は、遺伝に合わせた環境選びの重要性を強調し、誰もが自分に合った場で成功できる可能性を感じさせるものでした。
遺伝学の進展と社会的な懸念
本書では、遺伝子解析やポリジェニック検査によって将来の健康リスクを知ることができる可能性も提示されていますが、そこには技術的な限界や社会的な懸念も同時に存在します。
ナチスの優生思想の影響で、遺伝に関する議論は長らくタブー視されてきましたが、近年の遺伝学の進展が再評価されている点は興味深いものでした。
自分の特性を活かして生きる
全体として、『運は遺伝する』は遺伝と環境の相互作用に対する理解を深め、成功や能力が単なる努力の結果ではなく、遺伝という強力な要因に支配されている現実に気づかせてくれます。
しかし、その遺伝的特性を悲観せずに、適切な環境でその特性を最大限に活かすことが現代における幸福と成功への鍵であることを再認識させてくれる一冊でした。